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スポーツをやるために地方へ帰る。MNH流スポーツツーリズムの可能性

MNHスポーツへの想い vol.3 アイキャッチ画像

Part.3 スポーツをやるために地方へ帰る。MNH流スポーツツーリズムの可能性

<取締役社長 小澤尚弘インタビュー>

 

みなさんは、スポーツツーリズムをご存知だろうか?

ホノルルマラソンがいい例だ。
JALに乗ってハワイに行き、マラソンをして、観光もして帰ってくる。そのようにスポーツを目的とする観光旅行をいう。

私たちは今、スポーツツーリズムの可能性に注目している。

MNHの多くの事業は、平たくいうと地域活性化を目指してきた(*1)。
地域活性化と観光は切っても切り離せない。そして今回のMNHスポーツ設立を機に、MNHのやりたいことと、観光やスポーツとがだんだんリンクしてきたのである。

さて、このスポーツツーリズムの良さは、スポーツをする人も楽しいし、その地域も活性化すること。つまり双方にとってプラスになることだろう。

 

例えばモルック(*2)の大会。
日本ではまだまだマイナースポーツだが、年に一度の日本大会ともなれば、開催地に約1000人も集まる。

 

2日開催のうち、決勝の前夜祭には、キッチンカーがその土地のあらゆる特産品を運んでくる。それが終われば、今度は1000人が街に繰り出し、それぞれが飲食を楽しむ。スポーツを目的にやってきながら、その地域で遊ぶのも楽しみなのだ。つまり地域経済にとっても嬉しいことこの上ない。

 

沖縄や北海道といった有名な観光地には、放っておいても人が集まるだろう。しかし、その他の地域が人を集めるには何らかの強制力が必要となってくる。

そこでスポーツの出番というわけだ。

 

フェンシングの合宿を庄内町でやりたい

日本海と出羽三山にかこまれ、のどかな田園風景がひろがる山形県・庄内町。
日本でも有数の米どころだ。

 

この地を舞台にするのは、降ってわいたようなアイデアではない。
MNHが地元産の開発商品を手がけ(*3)、かねてより親交の深い町であるのだ。

 

現代の子供には「田舎」がないといわれている。

親世代の都心移住や、コロナ禍による帰省控えも後押しし、田んぼや山や川といった原風景を知らずに育ってしまう子どもが増えている。


「お米はスーパーにあるんだよね」と本気で信じているような子どもたちのために、フェンシングの合宿を、あえて庄内町でやり、同時に田舎をつくってあげられたら、と考えている。

ここでは、MNHが描くスポーツツーリズムを、私のイメージを通して伝えたい。

 

庄内町では、ホストファミリーが「おかえりなさい」と出迎えてくれる。

日中はフェンシングでひとしきり汗を流す。
試合で熱くなった後は、青空の下でリフレッシュするのもいい。
どこまでも続く田んぼのあぜ道をかけていくと、畑からキュウリやトマトにナスが顔をだす。それをもぎとって、その場で食べるのだ。

夜は満天の星空の下で、ホタルを追って、虫の音を聞く。
今宵、Switchはシャットアウトだ。

できれば親御さんも一緒に来て欲しい。
民家に集まり、ご近所さんを含めた飲み会がスタートする。
温かい笑顔や郷土料理が並び、地元の人たちが「よく来たね」と出迎える。

このような家族ぐるみの交流が続けば、もうひとつの“ふるさと”ができた感覚になるのではないか。

庄内町のふるさと納税にも協力できるだろう。
今まで、やみくもに知らぬ町へ納税していた人も、顔が見える人の町のほうが納得感があるに違いない。そうやって少しずつ輪が広がればいいと思う。

交流は、都会に戻っても続くかもしれない。
スーパーで庄内産のお米が並んでいたら、手に取るのではないか。

逆に庄内町の人が都会に訪れる機会があれば、優しく出迎えて欲しい。

ーーこんなふうに、MNHでフェンシングを続けている限り、スポーツを目的に、毎年そのふるさとへ帰れるのだ。庄内町にとっても、定期的に交流しにくる人が増え、活力や潤いが増すだろう。

 

地域の資源とスポーツと。MNHだからつなげられる

 

現在、過疎化が進む庄内のような町は、移住支援に力を注いでいる。

 

しかし定住人口よりも、まずは「交流人口(*4)を増やす方が、自然なステップであるという気がしてならない。先ほど述べた庄内町のストーリーは、ほんの一例だが、そのような交流を機に町を好きになる人が増えれば、いずれ移住にもつながるのではないだろうか。

「交流人口」でいうと、地域に人を呼び込むには調整役が絶対に必要だ。

どの町でも移住相談課というような担当者がいるが、まさにそれだ。

彼らが点在している資源を、面にして、移住や地域活性化を成り立たせている。

 

手前味噌ではあるが、MNHという会社は、その調整役が得意でもある。

 

例えば、お土産品の企画。
地域の社会課題を解決しながら、地元の老舗工場、販売先、障がい者の働く福祉作業所、農家さんなどのいろんな点(資源)をつなぎ、面にして、商品を開発している。

 

MNHは、こういったものづくりにおける “つなぎ役” を数多くこなしてきたその経験をいかして、スポーツをする人と地域の人をつなぎ、人々の活力や地域活性化に寄与したいと思っている。


その意味において「地域スポーツクラブ」というスローガンも掲げている。

 

現在、マイナースポーツやパラスポーツの各団体は、その振興に全力を尽くしている。
一方で国内大会をやるのが精一杯という側面もあるようだ。

そんななか、先の庄内町の例のように、MNHだからこそつなげられるものがあると思っている。

ものづくりを通じて世の中にないものを生み出してきたMNH。
これからはMNHスポーツを通じて、今までにない景色を描きたいと思っている。

新しく生まれ変わったMNHスポーツに、ぜひ期待をしていただきたい。

 

 

(*1)MNHでは、地域にある資源を活用して、課題を解決しながら雇用と利益を生み出す「地域商社」というビジネスモデルを推進してきた。

(*2)フィンランド発祥で、数字が書かれた木製のピンを倒してちょうど50点を目指すという、ボーリングとビリヤードを合わせたようなスポーツ。強い力が要らないため老若男女楽しめるのが特徴。

(*3)MNHでは2012年から山形県庄内町に事務所を構え、地元産の素材を使い商品開発を続けている。庄内町のお米をもっと広めたい想いから、独自の焙煎方法を研究し、2020年に玄米だけでつくった完全にノンカフェインの飲み物・「玄米デカフェ」を開発。今では全国のお米の銘柄で発売を展開する。

(*4)観光、通勤・通学、習いごと、スポーツ、レジャーなどのなにかしらの目的を持ってその地域を訪れる人たちのこと。

 

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