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寄せ集めからの新発想

MNHは何がしたいのか? vol.4 アイキャッチ画像

寄せ集めからの新発想

※本連載はMNH菅会長のインタビューをもとにお届けしています。

ものづくりの基本の4原則をお伝えしたが、MNHという小企業が売れるものをつくるには、それでは正直こと足りない。さらに武器が必要なのだ。

 

MNHはブリコラージュの発想を重視している。

ブリコラージュとは、一言でいえば寄せ集めでものをつくること(*)。

 

例を出そう。

ホテルのレストランの調理人と、家庭の主婦がハンバーグをつくるとする。

 

調理人は、そのホテルで決められているレシピを基に、あらかじめ用意された食材を使って、分量をきっちり計って、手順に添って、メニュー写真そっくりのハンバーグを再現するのが仕事だ。

 

一方、家庭の主婦が時間のない時に作るハンバーグ。作りはじめたはいいが、買い忘れに気づく。

「つなぎのパン粉がない!なら一枚残ってる食パンをちぎって入れよう」「ソースもない!なら醤油とケチャップを混ぜてつくっちゃえ」。

 

とりあえずキッチンにあるものを最大限活用して、臨機応変に自分流の料理を作る主婦。

MNHは例えていうなら、この凄腕主婦のような発想だ。

 

なぜこの発想を重視するのか?

今の世のなかでは、このレストランの調理人の思考が一般的だ。

大企業などは、緻密なマーケティングにもとづく理想的な商品を考える。そこから逆算して設計図をつくり、各手段や各部品を無駄なく準備していく。普通に考えれば、こちらのほうがよっぽど合理的で効率的だろう。


一方、MNHのような小企業にとって、大企業が市場で先行している分野では、経営資源に歴然とした差があるゆえ、残念ながら力が及ばない。


そこで発想の転換が必要になる。
菅会長の言葉を借りれば「たまたま目の前に使えそうなものがあるから、これを組み合わせて、いかにライバルにも勝てるようなものをつくるか」
そういう発想をしたほうが、我々としては断然、理にかなっているのだ。

 

この主婦だって、子どもに「レストランで出されたものより、ママのハンバーグの方が美味しい!」と言わせれば、しめたもの。MNHも、言ってみればそんな商品を目指しているのだ。

 

例えば、高尾山かりんとう。

たまたま同じ多摩地区にかりんとうの老舗があり、たまたま沿線に高尾山という観光地があり、たまたま無料で使える天狗というキャラクターがあった。それに独自のストーリーをつけ、販売方法を工夫するなどして、今や高尾山を代表するお土産として売れ続けている。

 

余談だが、ブリコラージュの発想は、パズルゲームにも近い。

「これとこれを合わせて、あそこの人に作ってもらって、こんなところや、あんなところでも売れるよね!」というように、アイデア段階から展望も含めたピースが揃っているのだ。そしてそのピースは、企画が進むにつれ、変わることさえある。

この点においても、レシピ通りに順序にそって料理をつくるホテルの料理人の思考とは、まったく違う。

「ブリコラージュ発想でいかに他と差別化できる商品に仕立てるか」

ここがMNHの力の見せ所である。

 

(*)文化人類学者のレヴィ・ストロースが提唱した考え。理論や設計図に基づいてものをつくる「設計」とは真逆のやり方で、その場で手に入るものを寄せ集め、それらで何がつくれるかを試行錯誤しながら、最終的に新しいものをつくること。

 

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